大きな口を開けて?
トレーナーの竹本です!
本日も音楽ブログをお届けします。
「大きな口を開けて歌いましょう」と、子供の頃に学校の先生に言われたことはありませんか?
“大きな口を開けて歌うのが良い”と教わったことのある人も多いと思いますが、実はそうとばかりは言えないのです。
何を隠そう小学生の頃、ほんの少し学校の合唱クラブにいたこの僕は、その『口を大きく開けて』の洗礼をドバドバと受けてスクスクと育ってきました(笑)
「指が縦に3本くらい入るぐらい開けて」という定番な方式はもちろん、分かりにくいですが「(口を開けた時に)耳と顎の関節の間に指が入るくらい開けて」と言われたことも、よく覚えています。朝練で先生が来るまでにみんなで筋トレしたり、今思うと先生も熱心な方で、小学生の割にはストイックなメニューだったなぁと思います。
そんな風に素直な子供の頃に刷り込まれた習慣は、大きくなってからもしっかりと染み付いていて、本格的にポピュラーヴォーカルのトレーニングを受けるようになってからは「口を動かしすぎる」「顎を開けすぎる」「急に開けすぎる」と毎回のように注意され、苦戦しました。
自分がポピュラーヴォーカルのトレーナーになって思うのは、やたらと口を動かしすぎる人や顎を開きすぎる人はとても「力みやすく」、(ポップスにおいては)子音が不明瞭になりがちであるということです。「子音が不明瞭」、これは歌のリズム感の悪さにも繋がっていきます。とにもかくにも、何をおいても「余分な力が喉に入っている人が多い」、これが最大のデメリットです。毎回これに付き合わされた恩師は、僕のレッスンにさぞ手を焼いたことでしょう・・・(苦笑)
逆に、口や顎をあまり動かさずに歌う人も「力みやすく」、発音も不明瞭なのです。多くの人はこちらに当てはまることが多いと思います。
この習慣が普段の話し方にも出ている人は、喉が疲れやすく、すぐに疲労してしまいます。また、言葉が聞き取りづらい、声が通らないなどの悩みを持っている人も「動かさない」ことが原因になっていることが多いのですよ。
口の『開けすぎ・動かしすぎ』も、口の『開けなさすぎ・動かなさすぎ』のどちらも、余計な力みや喉を閉めて歌う原因になり、発音の不明瞭さの原因にもなります。
結論から言うと、『適度に動かす』ことが解決法なのですが、そのポイントは唇周りの筋肉の動かし方と下顎の動かし方です。
『動かしすぎの人』『動かさない人』、それぞれ以下のことに注意しながら歌ったり話したりしてみましょう!
◉口や顎を動かしすぎる人
- 口を急に開けない
口から炎を吐き出す怪獣のようにガオォォと、下顎(口)を一気に開けると、一瞬で力んでしまいます。多くの人がこうなりがちです。
口から炎を吐き出さないようにしましょう・・・あ、下顎を急に一気に開けないようにしましょう!(笑) - 下顎は柔らかく動かす
マペットのように、パクパク・カクカク動かさず、ゆっくり柔らかく動かしましょう。 - 大きく開けるなら母音で
もし大きく開けるなら「子音」から「母音」に移る時に開けていきましょう。徐々に開いていく感覚です。
日本語は母音の前に子音がくるので、急に開くと子音の発音が疎かになりますよ。 - 口を横に広げない
一生懸命動かす人は、口を“縦”ではなく“横”に広げて動かしてしまいます。口を横に広げるだけで首の筋が浮き上がるのがわかりますか?
唇を横に広げがちな「イ」の母音の時は、特に注意が必要です。 - ともかく優しく動かす
「動かしのすぎの人」は、「乱暴」「雑」というより「頑張りすぎる」人に多いので、頑張りすぎず優しく丁寧に動かしましょう。
◉口や顎を動かさない人
- 下顎動かす
動かさない人は、これを特に意識しましょう!
良い話し方のコツの1つでもありますが、下顎を動かして歌ったり話したりすることで、喉の力も抜け疲れにくくなります。 - 表情筋を動かしましょう
顔の筋肉(表情筋)を動かす意識しましょう!唇周りや、特に頬の筋肉をいつもより動かしましょう。
全く使わずにいるとドンドン硬くなって垂れてきて、老け顔にもなってしまいますよ!(怖い) - 子音や母音を意識する
子音と母音を意識して、ハッキリと発音するようにしましょう!大袈裟ぐらいが丁度いいのです! - 恥ずかしさを捨てる
「動かさない人」の中には、「大袈裟にやるのが恥ずかしい」という気持ちを持っている人が実に多いのです。恥ずかしさを捨てて思い切ってみましょう!
いかがでしょうか?口の開け方や動かし方だけでも、声は大きく変わっていきます。
もし、口の開け方や動かし方で改善されることがあるならば、即効果が現れることなので、直ぐにやってみない手はありませんよ!
さてさて、そんな風に育ってきた僕ですが、ちびっ子たちにはどう教えているかというと、
『もっと口を動かしてごらん!』
と、言っていますねぇ(笑)
“ことば”が発達途上中の子供たちには、トレーニングとして寧ろ「動かす」方向に指導することが多いですし、曖昧になる言葉のトレーニングは大人よりも多く取り入れています。今となっては、小学生の頃の合唱指導の先生の気持ちも理解できます。大人になりましたねぇ(笑)
子供だけでなく、“ことば”に対しての悩みが増え始めたシニア世代にも「動かす」方向に指導することが多いです。世代やその人のタイミング次第でも「動かす」「動かさない」は変わってくるのです。
子供の頃の刷り込みというのは、大人になってからでも無意識に影響されているもの。
時には自分の中の常識を捨てて違う視点から見つめ直してみると、新しい発見があるかもしれませんよ!
それでは次のブログでお会いしましょう!